COLUMN

倦怠期の心理学
情熱が落ち着いたあとに残るもの

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この記事の要点
  • 倦怠期を「気持ちの問題」ではなく感情・思考・行動が絡み合う「関係の構造」として読み直す視点が身につきます
  • 愛の3要素(情熱・親密さ・コミットメント)と愛着スタイル(安定/不安/回避)から、すれ違いの原因をやわらかく観察する地図がわかります
  • 関係を蝕む4つの会話パターンと、それを和らげる「修復の試み」という具体的なふるまいの手がかりを集約しています

寝る前、電気を消して天井を見ながら「相手のことは大切なのに、なんでこんなに心が動かないんだろう」と胸のなかでつぶやいた夜——そんな時間、覚えがありますか。

嫌いになったわけじゃない。悪気があるわけでもない。ただ、以前のような温度感がうまく戻ってこないだけ。それを、多くの方が「倦怠期」という言葉でそっと呼んできました。

この記事では、関係についての3つの見方を軸に、倦怠期の心の動きをやわらかく整理します。倦怠期そのものの定義についてはこちらの記事でまとめています。

倦怠期を心理学的に見るということ

「気持ちの問題」と片付けてしまうと、それは「気持ちさえあれば乗り越えられるもの」になってしまいます。頑張れないのは自分が悪いのかな、と胸のなかで自分を責めてしまう夜が続いたりします。

でも、関係の状態は、感情・思考・行動のパターンが相互に影響しあって生まれる「構造」なんですよね。構造として理解できれば、ご自身を責めるのでも相手を責めるのでもなく、いまの関係を観察する手がかりになります。

愛の3つの要素——情熱・親密さ・コミットメント

付き合いはじめの頃、相手からのメッセージが届くだけで胸が高鳴っていた——それが、いまはスマホの通知音を聞いても「あ、はいはい」で済んでしまう。そういう自分に気づいて、少しさびしい気持ちが胸をよぎることがあります。

でも、それは愛情そのものが減ったわけじゃないのかもしれないんですよね。

古くから言われる愛の捉え方のひとつに、愛情を3つの構成要素から見る考え方があります。

  • 情熱(passion):身体的・感情的な引きつけ。恋愛初期に最も強い
  • 親密さ(intimacy):相手とつながっている感覚・信頼・温かさ
  • コミットメント(commitment):関係を続けていこうとする意思・約束

この見方によれば、倦怠期は「情熱」の側面が一時的に落ち着く時期であり、関係そのものが終わるわけではありません。むしろ、親密さやコミットメントが熟していくほど、情熱の波は静かになっていくのが自然な流れです[1]。情熱が薄れたことを「愛の喪失」と捉えるのではなく、「関係の重心が移った」と捉え直すことができます。

愛着スタイルが関係に与える影響

相手が仕事で遅くなる日、「早く帰ってきてほしい」と胸のどこかで願う自分がいる。一方で、相手のほうは「たまにはひとりの時間もほしい」とふともらす——そんな、噛み合わないようで悪気はない距離のとり方、心当たりはあるでしょうか。

これは、性格の問題というより、それぞれの「近づき方の癖」の違いだったりします。

古典的な愛着の研究では、幼少期に形成された「愛着のパターン」が、おとなになってからの親密な関係にも影響することが示されてきました[2]。愛着の研究では、おとなの親密な関係も、大きく3つの愛着スタイルで語られることが示されています[3]

  • 安定型:相手との距離を心地よく保てる
  • 不安型:相手の関心を強く求め、見捨てられる不安が出やすい
  • 回避型:親密になりすぎると距離を取りたくなる

愛着の研究では、長く続く関係において、お互いの愛着パターンの組み合わせがすれ違いの形を変えていくことが指摘されています。たとえば「不安型」と「回避型」が組むと、片方が近づこうとし、もう片方が離れる——というすれ違いのパターンが生まれやすいことが、愛着スタイルの理解から示唆されています[4]

倦怠期と感じる距離感は、関係そのものの問題というより、お互いの愛着スタイルが、いまのライフステージのなかでどう作用しているかという観点で見直すと、輪郭がはっきりすることがあります。

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関係を蝕む「4つのパターン」と修復の試み

洗濯物を畳みながら「ねぇ、今日さ」と話しかけたのに、相手はスマホに目を落としたまま「うん」しか返ってこない——そんな夜、覚えがありますか。話すのが面倒なわけじゃないんだろう、たぶん疲れているだけ。それでも、その「うん」の重さが胸に残ることがあります。

長期的な夫婦研究では、関係を破綻に近づけてしまうコミュニケーションに、いくつかの典型的なパターンがあることが示されています[5]

  • 非難:行動でなく人格を責める
  • 侮蔑:相手を見下す態度
  • 防御:自分の立場を守るための反論
  • 逃避:会話そのものから降りる

倦怠期の入り口で多くの方が経験するのは、このうち「逃避」の初期段階——話すのが面倒になる感覚です。これは関係が冷えた結果でもあり、関係を冷やす原因にもなります。一方で、こうしたパターンに「修復の試み」で応えられる夫婦が、長期的に安定することも示されています[5]。小さなジョーク、目を合わせること、「ちょっと言いすぎたかも」のひと言——そうした微細なふるまいが、関係の回復力(レジリエンス)を支えます。

心理学から見た「倦怠期の意味」

ここまで整理してきた3つの視点を、ご自身の暮らしのなかに重ねてみると、倦怠期の輪郭が少しだけ違って見えてくることがあります。

3つの視点を重ねると、倦怠期は次のような意味を持ちます。

  • 恋愛初期の情熱が落ち着き、親密さやコミットメントが前面に出る移行期
  • お互いの愛着スタイルがすれ違いとして表面化する気づきの時期
  • 関係を蝕むパターンに、修復の試みで応えられるかが問われる分岐点

つまり倦怠期は、関係の終わりの徴ではなく、関係を「自分たちらしい形」へ整え直す機会でもあります。一方で、上記のような関係を蝕むパターンが深く根を張っていたり、ご自身の心がすでに大きく削られているように感じる場合は、信頼できる場所(公的な相談窓口や専門家)に話を聴いてもらうことも、ひとつの選択肢として大切にしてください。

本サイトの20問のセルフチェックは、判断を急がず、いまの関係の温度感を、4つのタイプの輪郭でやわらかく描くために設計されています。

参考文献・出典

  1. Sternberg, R. J. (1986). A Triangular Theory of Love. Psychological Review, 93(2), 119-135.
  2. Bowlby, J. (1969). Attachment and Loss, Vol. 1: Attachment. Basic Books.
  3. Hazan, C. & Shaver, P. (1987). Romantic Love Conceptualized as an Attachment Process. Journal of Personality and Social Psychology, 52(3), 511-524.
  4. 岡田尊司 (2011). 『愛着障害——子ども時代を引きずる人々』 光文社新書.
  5. Gottman, J. M. & Silver, N. (1999). The Seven Principles for Making Marriage Work. Crown Publishers. (「4つの毒」: Criticism / Contempt / Defensiveness / Stonewalling) ↩1 ↩2

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