倦怠期は何年目に訪れるのか
1年目・3年目・5年目・7年目・10年以降の景色
- 1年目・3年目・5年目・7年目・10年以降と、年数ごとに現れる関係の景色の違いがわかります
- 3年目・5年目・7年目に揺らぎが訪れやすい構造的背景(脳の慣れ・子育て・ライフステージ)を集約しています
- 「何年目か」ではなく「いま、どの景色のなかにいるか」を観察する見方が身につきます
結婚式のアルバムをふと開いた夜、「あれ、もう何年目だっけ」と頭のなかで数えている自分に気づく——そんな瞬間はありませんか。「倦怠期は何年目に来るのか」という問いは、付き合いはじめ、結婚、あるいは同棲をはじめてしばらく経つと、ふと頭をよぎるものです。
この記事では、年数ごとに現れやすい関係の景色を、1年目・3年目・5年目・7年目・10年以降の5つの節目で整理していきます。倦怠期のどのくらい続くのか・なぜ訪れるのかについては別記事でまとめておりますので、本記事では「何年目に、どんな景色が現れるのか」に焦点を絞ります。
1年目——蜜月の終わりと、はじめての違和感
「一緒に暮らして数ヶ月、以前ほど胸のあたりが温かくならない日がある」——付き合って1年目の終わりごろ、そんな小さな違和感がふと訪れることがあるかもしれません。悪いことは何も起きていないのに、なぜか静かな凪のような感覚。
1年目は、関係のなかで恋愛初期の高揚感がもっとも強い時期ですが、同時に、その高揚感が一段穏やかになりはじめる時期でもあるんですね。
脳科学の知見では、恋愛初期に活発に分泌される、いわゆる「ときめき系」の神経伝達物質は、おおむね18ヶ月〜3年かけて穏やかになっていくとされます[1]。1年目の終わりごろから、その下降が静かに始まることがあります。
この時期の「あれ、なんか以前ほどときめかないかも」というささやかな違和感は、関係の終わりではなく、脳が日常用に最適化されていく自然な変化のサインです。1年目の倦怠期は、しばしば見過ごされ、3年目の本格的な揺らぎへとつながっていきます。
3年目——「3年目の倦怠期」に立ち上がる景色
「話題が一巡した気がする」——3年目のカップル・夫婦のあいだで、しばしば交わされる感覚かもしれません。相手のことは大切に思っている、でも、以前のような会話の弾みがなぜか湧いてこない、という夜。
長年語られてきた「3年目の倦怠期」は、上記の神経伝達物質の変化が完全に落ち着き、関係の重心が「ときめき」から「安心・信頼」へ移ろうタイミングと重なっています。
この時期、多くのカップル・夫婦が次のような景色を経験します。
会話の話題が一巡する:お互いの過去・好み・癖を知り尽くし、新しい話題が見つけづらくなる。
役割の固定化:ふたりの間の役割分担(家事、お金、休日の過ごし方)が無言の前提として運用されはじめる。
将来を語る機会の減少:「これからどう過ごしていくか」を改めて話す機会が減る。
3年目の倦怠期は、しばしば関係を整え直す最初の機会として現れます。新しい習慣やコミュニケーションのリズムを取り入れることで、関係の重心が「ときめき」から「信頼」へ自然に移ろっていく時期でもあります。
5年目——子育てピーク・役割の最盛期に沈む「ふたりだけの時間」
子どもの寝顔を見ながら、「今日、彼(彼女)と目を合わせて話したのは、朝の一瞬だったかも」と気づく夜——5年目前後のご夫婦のあいだで、しばしば訪れる感覚かもしれません。悪気があるわけではなくて、ただ、生活を回すこと自体に手いっぱいだったりする時期。
結婚から5年目前後は、お子さんがいるご夫婦の場合、子育てのピークが訪れる時期と重なることが多くあります。
長期的な夫婦研究では、第一子の出産後3年以内に夫婦の関係満足度がもっとも揺らぎやすいことが示されています[2]。出産後の余波が、5年目あたりにも長く尾を引くケースが少なくありません。
この時期、ご夫婦の関係は「夫婦」から「親」への役割が重心を取る状態になりやすく、「子育てのチーム」としての協働は深まる一方で、「ふたりだけの時間」「ふたりだけの会話」が物理的に削られていきます。役割の最盛期だからこそ、関係のなかで「人として向き合う時間」を意識的に確保することが、5年目以降の関係を支える土台になります。
ご自身の関係のいまの温度感を
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7年目——「seven-year itch」の現実と、外側から来る揺らぎ
「なぜかこの頃、疲れ方が違う」——7年目前後、そんなふうに気づく方も少なくないかもしれません。子育てのピークが少しずつ落ち着いてきたのに、代わりに親世代の介護の話が視界に入ってきたり、キャリアの節目が重なってきたり。
「7年目の浮気(seven-year itch)」という表現があるように、結婚から7年前後で訪れる第二の倦怠期は、古くから知られてきました。関係科学の研究は、長期的な親密な関係には相互依存と段階的な変化があり、関係が時とともに整え直されていく構造を概念的に整理してきました[3]。
この時期は、子育てのピークが過ぎはじめ、キャリアの転換期、親世代の介護の開始など、ライフステージの大きな変化が重なる時期と一致することが多くあります。
7年目の倦怠期は、3年目とは違う構造を持ちます。3年目が「ときめきの波が穏やかになる」ことに起因していたのに対し、7年目は生活の外側の変化が、関係のなかに反射する形で訪れます。介護や子育てや仕事の重圧が、関係に伝播していく時期と捉えると、責めなくていい部分が見えてきます。
10年以降——「第三の倦怠期」と、シーンの転換
「子どもが手を離れ、家のなかが少しだけ静かになった」——10年、15年と時が経つと、そんな景色がふと訪れる方もいらっしゃるかもしれません。悪いことでもなく、うれしいことでもなく、ただ、次の景色に切り替わろうとしている時期。
10年を超える長期の関係には、第三の倦怠期が訪れることがあります。これは「シーンの転換」と呼ぶべき時期で、お子さんの独立準備、ご自身の身体的な変化(更年期前後)、定年の見え始め、親世代との別れなど、人生の景色そのものが変わっていきます。
長期的な夫婦研究では、長く続く関係において、満足度は単調ではなく、複数の局面を経て変化していくことが示されています[4]。10年以降の倦怠期は、関係が壊れているサインではなく、関係を「次の景色のなかで、もう一度ふたりらしく」整え直す機会として現れています。
子の独立後の「空の巣」の時期、定年後の「ふたりだけの再出発」の時期——いずれも、関係の主役がもう一度ふたりに戻ってくるタイミングです。10年以降の倦怠期は、その移行を支える橋のような時間でもあります。
「何年目か」より「いま、どの景色にいるか」
本記事では年数ごとに整理しましたが、これはあくまで平均的な傾向です。1年目で深い揺らぎを経験する関係もあれば、20年目までほとんど揺らがない関係もあります。大切なのは「何年目か」よりも「いま、どの景色のなかにいるか」を観察することです。
もし、年数のどこかで関係の停滞が深く続いていると感じる場合や、ご自身の心が長期にわたって疲弊しているように感じる場合は、信頼できる場所(公的な相談窓口・心理カウンセラー・夫婦療法の専門家など)に話を聴いてもらうことも、ひとつの選択肢として大切にしてください[5]。
本サイトの20問のセルフチェックは、年数の物差しではなく、いまの関係の温度感を4つのタイプの輪郭で描くために設計されています。「自分たちは何年目だから〇〇のはず」ではなく、「いま、ふたりがどの景色のなかにいるか」を観察する手がかりとしてご活用ください。
参考文献・出典
- Fisher, H. (2004). Why We Love: The Nature and Chemistry of Romantic Love. Henry Holt and Company. ↩
- Gottman, J. M. & Gottman, J. S. (2007). And Baby Makes Three: The Six-Step Plan for Preserving Marital Intimacy and Rekindling Romance After Baby Arrives. Three Rivers Press. ↩
- Kelley, H. H., Berscheid, E., Christensen, A., Harvey, J. H., Huston, T. L., Levinger, G., McClintock, E., Peplau, L. A., & Peterson, D. R. (1983). Close Relationships. W. H. Freeman. ↩
- Huston, T. L., Caughlin, J. P., Houts, R. M., Smith, S. E., & George, L. J. (2001). The connubial crucible: Newlywed years as predictors of marital delight, distress, and divorce. Journal of Personality and Social Psychology, 80(2), 237-252. ↩
- Johnson, S. M. (2008). Hold Me Tight: Seven Conversations for a Lifetime of Love. Little, Brown and Company. (Emotionally Focused Therapy / EFT) ↩